出産してすぐホームレスになってしまった女性が、綱渡りのような日々を生きていく様子を書き綴った手記。
この本の舞台は米国だけど、機能していないセーフティーネットにすがりながら、肉体も精神もぎりぎりの状態になりながら、最低賃金で必死に働く様子が本当に生々しい。変にドラマチックじゃないし、この親子はこの先どうなってしまうんだろう…というのが、本を読み進めながらほとんど最初から最後まで思ってることだった。
メイドとしての仕事も、数えるほどしかない心温まるエピソードを除いたほとんどが辛すぎる内容ばかりで夢も希望もないんだけど、そんな中にあってもひたすら力強く前に進もうとする作者の生きる力が眩しい。
最後には働きながら通った大学も卒業できて、この本もベストセラーになって、安定して暮らせるようになった彼女ではあるものの、そう能力があってラッキーな人ばかりじゃないというのもしっかり覚えておかなければいけない現実だと思う。生きていく上で必要なものの筆頭はお金で間違いないだろうけど、きつい状況にいる人こそ誇りや尊厳を欲しているというのもよくわかった。
住んでる家を他人に掃除してもらうという文化がない日本でも、メイドと似たような労働環境で、生きることが困難になっている人がたくさんいる事は想像力を持って考える必要がある。