川上未映子、ひさびさの長編小説。想像からは大きく外れたジュヴナイル感たっぷりの話しだった。

もう少しで卒業という小学6年生の男の子麦彦と女の子ヘガティーのほろ苦いと言っていいのか甘酸っぱいと言っていいのかわからないけど、まあそう、日常を描いた話し。

大事件も起こらないし鬼気迫る言葉の応酬みたいなものもないんだけど、小学6年生の目線と感情の起伏がきちんと伝わって来るなぁという印象。中学生ほど大人ではないけどもう子供ではいられなくなるちょいと微妙なお年頃な感じ。

チョイスされた言葉の響きとか音の並びとか文章が並んだ時のリズムとかが音楽的で読んでいて気持ちがいい。ミス・アイスサンドイッチというネーミングなんて軽くガッツポーズしたくなるくらいに見事な腹にストンと落ちる感。
本を開いた時に目に飛び込むビジュアルも考えた上でなのか結果的にそうなってるのか、ひらがなの多さと改行の少なさで構成される密度が作者を特徴づけている気がする。実際、会話部分は別として情景描写でギュッとしてるところは、知らないでそこだけ見ても作者だとわかるんじゃないかな。多分。

学校が舞台になっている作者の代表作と言えば、ヘヴンが思い浮かぶ。改めて読んでみたくなった。すごくキツイけどぐいぐい感じるものがあったな、確か。

たった今、ヘガティーと入力して変換したら、候補の一つ目にあだ名の由来になった出来事そのものを想像できるワードがちゃんと出てきて笑ってしまった。

あこがれ / 川上未映子