信仰を理由に輸血を拒む未成年の少年と、その少年の命を委ねられた女性裁判官、二人を中心に話しが展開していく。こう聞くだけで読んでみたくなるけど、それだけで終わる話じゃなかった。
ある日突然急性白血病になってしまった、成人と見なされる年齢である18歳まであと数ヶ月の少年。両親とともに熱心なエホバの証人である少年は治療のための輸血を拒否する。
一方、少年をそのまま死なせるべきなのか、信仰の自由を奪ってでも輸血をして命を救うべきなのか、の判断を下さなければいけない女性裁判官。プライベートではそれなりに深刻な問題を抱えながらも、自分のこととなるとうまく対処できないでいる。
まずこの対照的な二人の人物像の設定が絶妙。一見聡明で完璧に見える少年も決してそう完璧ではなく、スーパー裁判官と見られている女性も家に帰れば悩み多き人だったりする。
輸血するか否かが主題になっているのかと思いきや、判決自体は全体の半分もいかないうちにわりとあっさり決まってしまう。意外に思っているところを読み進めていくと、あぁ判決自体は一つの素材でしかなかったんだと思わされる。
信仰とは、子供・大人とは、という二つの大きなテーマをほんっとに精緻な描写で書き込んであって、没入感がすごい。初夜に続いて2冊目の著者作品だったけど、俄然他の作品も読んでみたくなった。