本屋の平積みで目に入った表紙が気になって、パラパラめくってみたら面白そうだったので(結構厚めだけど)読んでみた。
以下軽いネタバレなどもあるかも。

ごく近未来、インターネット・カンパニー、サークルが提供するソーシャルネットワークサービスが広く普及し生活に深く浸透している世界が舞台。とても洗練されていて社会事業にも熱心で最先端のイケてる企業のサークルだが、徐々にその方向性が…というストーリー。
見ること聞くこと全てシェアしろ、プライベートは罪、オープンこそ正義、生体データもライフログも全て差し出せ、という過剰な空気が醸成され、そうあるべき!という同調圧力が高まった時に何が起きるのか。

明らかにGoogle(とすこしFacebookとかInstagramとか)をモデルにサークル社が作られていて、現実の自分にも心当たりあるなぁと言うか身につまされるなぁという点が多々あった。
言うなれば「明るいディストピア」的な話しなのだけど、文体のせいかあまり悲惨さはなく、結構コミカル。ちょいリアルなところがまた読みやすくしてると思う。

「過剰な透明性・オープンマインドがもたらす思いやりに満ちた一見するととても素晴らしい世界」というのが伊藤計劃のハーモニーを思い出させた。いったん動き出したもの(それが良いことだと信じられているとさらにたちが悪い)を止めることの難しさ、今さらオプトアウトできないよ!もう!的な怖さってある。GmailとかGmailとかGmailとか。
つい最近始まったGoogle Photosも、この話しを読んでからだと妙にぞくっとくるものがある。有り体に言って、利便性を人質に情報を差し出す怖さ。

あと、サークル社内の風景とかデバイスの描写とか妙に映像的だと思ったら、やっぱり早くも映画化が決まってた。結構面白そう。

最後にサークルの社是を引用。

秘密は嘘 分かち合いは思いやり プライバシーは盗み

ジョージ・オーウェルの1984年ではこうだった。

戦争は平和 自由は隷属 無知は力

ザ・サークル / デイヴ・エガーズ